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15話 分岐点

last update Last Updated: 2025-04-09 20:16:26

ちゃぷん!

 「全く釣れないな」

釣り竿をかざしながらため息をつく理人

 理人 理緒 隆太の三人は食糧調達のために魚を釣りに港まで来ていた。

「つれないな~」

理緒はむす!!とした顔で釣り竿をかざしている。

 「しかたねぇなー場所変えようぜ」

「他にもポイントがあるんだ案内するぜ」

 隆太はそういうと立ち上がり二人を次の釣りのポイントに案内する

 食糧不足を少しでも解消するため彼らは魚を釣って何とかしようとしていたのである。

しかし、全く釣れず苦戦中である。

 早朝の事である隆太が昼食に関して話し出したのである。

「兄ちゃんのシチューも好きだけどよやはりそれだけでは栄養バランスも偏るからよ」

 隆太の言うことは間違いわない。

理人が学校に転校してきてからはほとんど昼食は野菜と果物と理人が作ったシチューである。

 理人が来る前は、那智が食事を提供していたが彼女が亡くなってしまったため今現在は自給自足で飢えをしのいでいる状態である。

 3人は場所を変えて再び釣り竿をがさす

 「ち...まったく釣れないな...」

隆太は完全にふてくされて釣りに集中できないでいる

 「...ぴくん!あ逃げられた」

理緒は隆太とは違い真面目に釣りをしているようだが餌ごと持っていかれているようだ。

 「...........」

理人は完全に無表情で釣り竿をかざしている。たったいま餌を取り換えるようであるこれで本日10回目の餌の交換

 「ダメだ釣れない」

「兄ちゃん眼が死んだ魚の目みたいになってるぜ」

 「理人ッちいろいろ物知りでコンピューターには強いけどこういうことは苦手だよね」

「すまない....俺は力仕事とかこういうたぐいなものは本当に苦手なのだ」

頭を抱えて悩みだす理人

 二人の言うとおりである理人は非常に頭もよく物知りで料理なども得意ではあるが、力仕事は苦手で非力なのである。

 このところは前回の人生でも同じであった。

 前回の世界での彼の人生の小中高生時代の彼の成績は学年およびクラスでもトップクラス。特に高校時代ではコンピューター関連の成績は3年間を通し学年トップであった。キーボウト早打ち検定を最上級の物を会得したほどである。

 しかしそんな彼も完ぺきでは無かった。

 「......今回も体育の成績は、耳(3)か......(ちなみに成績表は5段階)」

しかもそれだけではなく
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    ××××年×月××日僕に妹が出来た。妹を出産した後、体が丈夫でなかった母はそのまま寝込みがちな生活が続いた。元々病気を患っていたので無事に生き延びたのは奇跡だったかもしれない母より------。「私に何かあったら代わりにあなたが守ってあげて」と息子にたのむ。----------------。父は母の看病で手いっぱいで妹への世話などできる状態では無かった。父は僕と妹のすべてが無関心だった。母への介護で手いっぱいだったからだ。僕は妹に「ミナ」という名前を付けてあげた。ミナはいつも僕に可愛い笑顔を見せてくれる。僕がミナを守るんだ。母は今日も寝ている。最近では眠っている時間の方が長いような気がする。それでも母はミナがそばによると気配でわかるのか起き上がり笑顔を見せる。母よりーーーーーーーーー。「彼女に素敵な名前をありがとう」と息子に言う。----------------------------------。父は今日も母だけを心の拠り所にして生きている。とにかく全てが母を中心に考えている。仕事をする理由も母のため。僕は父と会話すらしたことがない全てが母のため------。でも僕は母も父も二人の事を一度も恨んだことはなかった。父は僕たちに愛情は微塵も無かったが母に対しての愛情は本物だから。母よりーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。「お父さんを恨まないで」と息子に言う。--------------------------------------------------------------------。母の僕たちに対する愛情は本物である。だから僕は父も母も恨まない。

  • Never Islan   30話 Sonokono kokorowa Jigawa Betsujindesu

    久しぶりに家に帰れる。ユウキはそう思いながらミナを背負い歩き続けた。 家に帰るのは5年ぶりだ。あの日から家には一度も帰っていない。 あの装置を動かすために色々と時間をかけてしまった。 ユウキはミナをホムンクルスとして蘇生させるために5年の月日をあの研究室で過ごしたのだ。「 もう少しで家に着くから辛抱してくれよ?」 ミナはユウキに背負われながら「すうすう」と寝息を立てながら眠っている。 彼は無言で更にしばらく歩き続けた  しばらくすると急に胸が焼けるような感覚がユウキを襲い始めた。突然にである「はぁはぁ....くそ....なんだこれは」 ユウキは胸がしめつくような動悸と目まいの症状が現れた。 ドサ! ついに我慢できなくなりその場に倒れこんでしまう。「え?...」 ユウキは隣で倒れて「ゼエゼエ」と苦しむミナをみて彼女の手を握る。「なんで...ここまで来て..」「誰か...助け...」  ミナはゼェゼェと息を荒くし苦しそうにしている。 雪が降りだしてきた。 ユウキはミナに覆いかぶさるようにして庇う。「ちゃんと問題なく発光しているね」 美亜と奏花は町中の建物についている人工発光電灯に異常が無いか見回りをしていた。「ミディールさんの言った通りこれで少しは見晴らしが良くなるといいんだけど...」 今の時期は吹雪などで昼間でもほとんど光は遮られ真っ暗になるときもある。 そこで少しでも楽になればという事でミディールの案で人工発光電灯を街のいたるところに付ける事となった。「まるでクリスマスの時期に付けられるイルミネーションみたいだね」 美亜は色とりどりに光り輝く人工発光電灯を見ながら積もった雪を踏みながら少しずつ歩き出す。 かなり積もっているようで歩きづらそうである  しばらくすると雪が再び振り出してきた。少し吹雪きそうな予感がする。「もうこれぐらいにして屋敷に戻りましょう」 二人は一通り確認し終わると屋敷に戻る事にする 屋敷に向けて歩き出した二人だがやはり予想通り吹雪いてきた。「美亜ちゃんあれーーー。」 奏花が何かに気づき指をさす。 指をさした場所に人が倒れている。  雪に埋もれている。男の子が女の子を守るように覆いかぶさっている「しっかり....」 美亜は二人に必死に声をかけ続ける。 奏花近くの民家に助け

  • Never Islan   29話 My brother's heart was already broken.

     ホムンクルスそれは人工的に人の手で作り出された人口生命体である。 人の手で人工的に作り出されたガーボンヒューマンとは全く別の存在である。 ガーボンヒューマンは1からすべて体を形成する肉体そのものを人工的に作られほぼ完ぺきに作り上げられその存在そのものがオリジナルである。ホムンクルスはその逆である体を形成するためには元となる存在が必要不可欠なのだ。 体の体格や性別そして顔を形成するためには元となる存在となる人物の髪の毛が必要なのである。 そして作成者はその元となる存在の記憶と思い出を心に強く宿っていなければならないのである。そしてホムンクルスの寿命は作成者と一心同体となりどちらかが死ねばもう片方も死ぬこととなる ホムンクルスを作るためには元となる存在と強い絆が必要なのである。その存在のすべてがその作成者の記憶を元に作られるからだ。  いわばホムンクルスとは作成者の記憶が実体化したものなのかもしれない。作成者が死ねばホムンクルスが死ぬのはここからくるサイクルなのかもしれない。 しかしなぜその逆の場合でも死んでしまうのか?それは今現在でも謎である。一つだけわかっていることがある。ホムンクルスを作ろうとした者は皆、心に傷を負っている者がほとんどであった。 ザクザク.... 青年は少女を背負い積もった雪を力ずよく踏みながら力いっぱい歩く どれくらい歩いただろうかそろそろ市内に入るはずだ。 さらに歩き続けると青年と少女の周りは様々な色に輝く電球の光のような物が街のあらゆる建物に付けられキラキラと光る光景が彼らの前に表す。  「綺麗だ...」 今現在のこの世界は世界的な寒冷化により電気の供給がいきわたらなくなっている。  どうやらこの光は電線などを使わなくても発光し続ける事が出来る人工発光電灯のようだ。様々な色が町中に光を照らしている。 「綺麗....」 少女はその光景を目にしながら青年にしがみつく    「起こしてしまったか...すまない」 そういうと青年は再び歩き出す。 「ごめんなさい私何も覚えてなくて...」 「いいさ、構わない。ミナが目を覚ましてくれただけでも...それで十分だ」「私は何であの機械で眠っていたの?」「ミナは病気でずっとあの機械の中で治療のために眠っていたんだ

  • Never Islan   4章 偽りの時間とホムンクルス 28話 偽りの時間を求め

    島の市内にとある兄と妹がいた。二人は貧しいながらも協力して二人で生きて来た。二人が幼い頃、両親は二人を捨てどこかに去ってしまった。二人はとにかく力を合わせて協力して生きてきた。 真冬は二人で寄せ合いながら。お腹が減ったときは少ない食料を二人で分け合いながら協力し合った。 ある日の事だ妹がいきなり血を吐き倒れてしまった。唐突に起きたこの事態に兄は妹の姿を見て忘れていた記憶を取り戻した。両親は二人を捨てたわけでは無かった。 あの日父は病魔に伏せた母を助けるために市内の病院に行くために母を抱きかかえて吹雪の中に消えた。そうだーーー。妹もまた母と同じ病気にかかってしまったのだ。兄はとにかく妹を助けるためになんでもした。妹を市内の病院に入院させた。妹のために働いてお金を稼いだ。 しかし兄の想いは届くことなく妹は天に召されてしまった。 「.......」兄は妹のお墓の前でただ立ちすくんでいた。  それから数か月がたったある日。彼は図書館である一冊の大きな本を見つけた。人の手で人工的に人の姿の生命体を作る方法。「ホムンクルス生体作成」が書かれた書物である。兄は本に書かれていたホムンクルスの作成に想いを持ち始めた。ホムンクルスの作成には人の髪の毛が必要であった髪の毛は男性の物か女性の物かでホムンクルスの見た目の性別が決まると書かれていた。その後に書かれている文章は黒く塗りつぶされ読めなくなっている。 兄は妹の髪の毛を使う事にした。既に心は決まっていた。たとえそれが形見であってもだ。-------------------------------------- 島のはずれにあった無人の研究施設。本にはホムンクルスを作る場所であったことが書き示されてあった。兄はその場所を探し出し、ホムンクルス生体の作成に必要な全ての材料を研究施設に持ち込みその場所を拠点に行動を始めた。 ホムンクルス生体の作成に必要な材料、「素材」という。必要な素材は全部で3つ。1つ目は作りたいホムンクルスの人格を形成するために必要な記憶を持った人。これは兄そのものが受け持つことになる。兄は自分の中にある妹の「思い出の記憶」を素体にするつもりだ。二つ目は人の骨。つまり人骨である。兄は妹の遺骨を素体に選んだ。そして最後は人の髪の毛。これも妹の形見の髪の毛を素体

  • Never Islan   27話 夢

    あいつはあの示された座標にいる。俺はすぐにそう思った。何故かわかる。本能なのか?それともこれはただの妄想なのか?どんな関係であろうとあいつは俺にとって血のつながった妹だ。あいつは今どんな状態にあるかわからないが多分あいつの心そのものが俺に何かを呼び掛けたのではないのだろうか? なあ?おまえ俺の心に呼び掛けたんだろ?なら何でもいいから俺に何かヒントをくれよ。みんなお前を探してる。おまえがいないとみんな先進めないんだよ....「今日はもう遅いしこの施設に泊まって行ったらどうかしら」理人と美亜はミディールの提案を受け入れ施設内で一夜を明かすことにした。その日の夜夢を見た。いつもとは違う夢を。夢ではない現実の夢を。「.........」理人はゆっくりと目を開けると。まったく身の覚えのない場所に建っていた。ああ...これは夢だ理人ははっきりとそう思った。理人の隣には美亜がきょとんとした顔で一緒に立っていた。周りをよく見渡すとどうやら巨大な神殿のような建物の中のように見える。長い道が続く廊下のような道があるがガラス窓などがなく顔を出せばあたり一面が見える状態だ。「これ一体どういう事?」「私に言われても...」「これ絶対夢だよね」「はい...確かに私は理人さんの隣で寝ているはずです....。」「どう言う事だこれは..」 二人は神殿内部を探索する事にする。内部の状態は見るからに歴史を感じる装飾が施されている。 二人は階段を上り、上へ上へと進んで行き次の階に入ると急に現代の雰囲気を感じさせるエリアに様変わりした。 その階を探索してみると巨大な扉を発見した二人は扉を開けその先へ進むと非常に広い空間にでた。周りの見た目は文明のレベルが桁並みに高く見え高度な科学力を思わせるものとなっている。床は光沢のような素材となっており周りは明らかにこの世界の機械ではない何かが置かれている。その空間の真ん中に巨大なモニターのようなものとコンピューターの端末が置かれておりその前に位置する場所に美亜が眠っていたカプセル型の機械に似たようなものが置かれている。二人はその中を覗こうとするが霜が入っているような感じになっており中が見れない状態になっている。「ここは...本当に夢の中なのか?」 理人がそう思うのも仕方がないことだ。そばにいる美亜も理人本人もし

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